こまめな声掛けで高齢者の尊厳を守る

介護を受ける人の特徴は、老化により身体機能が低下したり、認知症を発症したことで自分の力で日常生活が送れなくなったことなどが挙げられます。そのような高齢者に身体的な介助をするのが介護の仕事と想像する人も多いでしょう。もちろんそれも介護の仕事であり、高齢者がより快適に過ごせるような支援が必要です。

それ以上に介護の仕事をするうえで基本といえるのは、高齢者の尊厳に配慮した介護をすることです。体が不自由な人や認知症の人は、一見すると行動が遅くしっかりとした意味がないように感じられることもあります。しかし、高齢者一人ひとりにしっかりと意思があり、尊厳を持った人であることを忘れてはいけません。

高齢者の代りに介護士がすべてを行い、高齢者の意志を無視した介護は禁物です。これは尊厳に対する配慮が欠けた介護であり、どんなに技術的に優れていても推奨されません。尊厳に配慮した介護を行うためには、ひとつの介護を行うごとに声掛けや意思の確認をすることが必要です。「今からこの介護をします」という介護士の行動を示すのではなく、体調の確認・介護の内容説明・介護に対する同意という意味での声掛けをすると、最低限の尊厳を守るための行動をとることができます。

声掛けをせずに介護士が必要と思う介護をするだけでは、独りよがりの行動になってしまいかねません。また、本人の意思決定によって、できることは任せ、その介助に努めるといったことも、尊厳に配慮した介護を行うためには必要です。尊厳に配慮しない介護は、高齢者とその家族からも信頼を得られないことになります。